棚田を借りて、田植えや稲刈りの農作業体験をしてみよう!

棚田オーナー制度とは

オーナー制度とは、都市住民に直接耕作に関わってもらいながら棚田を保全していこうという方法です。1992年に高知県の檮原町で16組のオーナーを募集したのが始まりで、さまざまな理由で休止・中断している地区もあるものの、北海道や東北地方を除く全国32府県の約80地区で行われています。
一番多いのは新潟県と兵庫県で、各10地区前後が取り組んでいます。募集するオーナー数は30組前後が多く、中には100組以上のオーナーを受け入れている地区もあります。

神在居千枚田

棚田オーナー制度発祥の地 高知県梼原町神在居

基本的な仕組み

  1. 地元農家のグループと行政が連携し、棚田のオーナーを募集する。
  2. 地域の非農家や地域外の都市住民など(個人・家族・グループ)が応募し、会費(平均3万円程度)を払って一定区画の水田(平均1㌃=100平方㍍)を割り当てられる。
  3. オーナーは田植え、草刈り、稲刈りなどの作業を、地元農家の指導を受けながら行う。
  4. その区画で穫れたお米がオーナーのものになる(「玄米30㌕保証」などのやり方も)。

オーナー制度の5つのタイプ

オーナー制度は下の表のように5つのタイプに分類することができます(当会代表・中島峰広早大名誉教授による)。現在最も多いのは「Ⅰ 農業体験・交流型」で、約6割。続いて「Ⅲ 作業参加・交流型」が約4分の1を占めています。

オーナー制度のタイプ
農業体験・交流型 農業体験に重きがおかれ、田植え、草刈り、稲刈りなどの来訪が2~3回。
農業体験・ 飯米確保型 農業体験よりむしろ一家の飯米( はんまい) を確保するのが主目的。体験のための来訪は2~3回。Ⅰ型よりも配分される収穫物の量が多く会費も高い。
作業参加・交流型 来訪の回数や作業の種類が増え、農業体験から一歩進んだ類型。来訪の回数は、田起こし・田植え・草刈り・稲刈り・脱穀などの作業に4回以上参加。
就農・交流型 来訪頻度が最も高く、年10 回以上。作業には小型の農業機械なども使用。
保全・支援型 基本的に金銭的な支援を行い、オーナー田の管理費や保存会などの組織の運営費にあてる。収穫期に少量の収穫物がお礼として届くものも多い。

オーナー制度の意義

お米の値段として考えれば割に合いませんが、多くのオーナーはお米が欲しくて参加しているのではありません。応募の動機は「自然に触れたい・子供を自然に触れさせたい」「自分で《安全・安心な》お米を作ってみたい」「定年後の楽しみに」などさまざま。中でも多いのは「棚田の保全に少しでも協力できれば」という想いのようです。
受け入れ地域側では「オーナーとの交流によって棚田や地元の価値を再認識し、自信を取り戻した」「交流は楽しい。地域も明るくなった」「昔の風景がよみがえった」などの評価があります。

オーナー制度の経済

オーナーの会費は、田んぼの地代、苗・肥料・用水などの費用、日常管理をする地元農家(地主さんを含む)の日当、オーナーへの案内の事務費などに使われます。収穫された米と一緒に野菜や特産品を送ったり、作業に来たオーナーに昼食をサービスする地域がある一方で、「”もてなさない・もてなされない“が長続きの鍵」という地域もあります。
オーナー制度を開設せず穫れたお米を普通に出荷する場合と比べれば、収入面では格段の相違があると考えられますが、自分で耕作する場合には発生しない費用や、人や財政面で行政がさまざまに補助している地区もあり、一概には言えないようです。

オーナー制度の課題

オーナーの作業回数が少ない場合、田んぼの日常管理をする地元の作業者をどう確保するかが悩みの種。オーナー制度が盛んになって既に数年が過ぎており、地元農家も確実に高齢化しているからです。また情報発信力の弱さや競合の増加による応募者の減少、マンネリ化も指摘されています。
オーナー制度は、棚田を耕す農家と都市住民の距離を大きく近づけるきっかけとなった、画期的なアイディアでした。今ある課題をしっかりと見つめ、棚田の保全に真にプラスになるオーナー制度へと、協力して育て上げていきたいものです。