特集「棚田でCAMP」

稲倉の棚田キャンプ

棚田は農業の場としては稲刈りを終えてしまえば、いわゆる農閑期というオフシーズンとなります。しかし農業だけでは維持が難しい棚田において、オフシーズンをなんとか活用できればとライトアップやイベントなどが各地で行われています。そして、今注目の取り組みが棚田でのキャンプ体験。「満天の星空と棚田で目覚める朝」という特別な時間を味わえる、とキャンプ好きにも大好評だそう。今回は4地域の最新事例を紹介します。

稲倉の棚田 / 長野県上田市

稲倉の棚田キャンプ

開催時期 2017年春秋に試験開催、2018年から毎年、稲刈り後→田起こし前の、田んぼ作業がない季節の週末に随時開催。別に通年キャンプ可能な場所あり。※2020年はコロナ禍で2021年春開催へ延期(3月から追加募集予定)
設  備 トイレ、水道は隣接
参加費等 ソ ロ区画3500円(棚田米1合、ソーセージ等含)~ プランによる
※キャンプ用品等の有料貸出あり
問い合わせ https://www.tanada-camp.com

棚田でキャンプしながら里山を堪能する。満天の星空の下で田んぼの中にテントを張り、棚田を体感することで、保全活動の一環に繋げていくことができたら。そんな企画が棚田の新たな可能性を示すイベントとして、注目されるようになってきました。その先頭を走っているのが稲倉の棚田です。キャンプを企画するグループ「棚田フューチャーズ」が生まれ、後援や協賛を取り付け、当初よりキャンプ道具の貸し出しにも対応しています。

2020年は企画を立ち上げて4年目。今年こそと意気込んでいたのに、コロナのせいでイベントは延期に。現在は小規模ながら貸切キャンプを実施していて、コロナ禍の中で人気です。

稲倉でキャンプする魅力は、昼間は美ヶ原高原などの遠景が、夜は上田市街の夜景が見えること。もちろん星空もちゃんと見えますよ。都内から2時間半、高速のインターから5キロとアクセスは抜群。来春のキャンプこそ、何とか開催にこぎつけたいと、準備を整えて待機中です。

(談:棚田フューチャーズ代表・玉崎修平さん)

坂折棚田 / 岐阜県恵那市

坂折棚田キャンプ

開催時期 2018年秋から、田んぼ作業がない季節の週末にイベントとして随時開催
設  備 トイレ、水道は隣接
参加費等 1 テント4000円(2名参加費含む) +1名毎に1000円(状況により相談) ※キャンプ用品等の貸し出しはありません。各自ご持参ください。
問い合わせ 柘植康博(090-8321-4848)

お米作りも終わり、次の春を待つ田んぼ。400年以上の歴史のあるこの坂折棚田で、稲作だけではない新しい魅力を発見したい。冬の間、棚田でいろいろ遊んでみたい。2年前から始まった「棚田でキャンプ!」。自然いっぱい絶景の棚田で、テントを張ってキャンプしませんか。そんな呼びかけをしています。

展望広場のすぐ下の田んぼが会場なので、綺麗なトイレと水道は完備しています。テントやキャンプ用品は持参いただきますが、棚田米、薪や炭の販売もあります。

坂折棚田では冬場の田んぼライトアップを実施中。夕方には畔に並べられたLEDライト1000個が灯り、幻想的なイルミネーションが楽しめます。深夜は満天の星空が見え、運が良ければ流れ星も見られます。そして、正面の笠置山からの日の出は最高! 名古屋市内からだと1時間ちょっとで行けるという、アクセスの良さも自慢です。

このキャンプに参加した人が坂折棚田を好きになり、次は棚田オーナーになった、という方も増えてきています。

2020年秋。コロナ禍ではありますが、いろいろ用心しながら随時開催中。年越しキャンプも予定しています! 田起こし前の3月ごろまで続ける予定です。

(談:棚田キャンプ責任者・柘植康博さん[NPO法人恵那市坂折棚田保存会理事])

竹棚田 / 福岡県東峰村

竹棚田キャンプ

開催時期 2019年秋に棚田ライトアップイベントに合わせて初開催。
2020年秋が2度目
設  備 トイレ・水道はすぐ近くの里山カフェの設備を利用
参加費等 1区画5000円(棚田米1kg、トーチ1本含) 全10区画
※キャンプ用品等の有料貸出あり
問い合わせ 岩屋キャンプ場管理棟すてら(0946-23-8423)

東峰村は福岡県中央部の東端に位置し大分県日田市と隣接。人口は約2000人、高齢化率は43.3%と県下一高齢化の進む地域です。中でも、竹棚田を有する竹地区は村内でも特に高齢化率の高い地区。棚田の原風景を維持するにも想いだけでは及ばなくなってきました。

そこで始まったのが竹棚田景観保全プロジェクト。地区内でキャンプ場と古民家宿泊施設、カフェを運営し、売上の一部を
棚田の景観保全につなげるというものです。棚田でCAMPはそういった取り組みの一環として企画しました。

同時開催で、棚田の石積みに光を灯すライトアップイベントも開催。夜は幻想的な棚田の風景を、朝は暮らしと共に脈々と
引き継がれてきた里山風景を楽しんでいただけるでしょう。利用していただいたお客様からは「農家さん方の努力や暮らしぶりを感じることができた」という言葉もいただくことができ大変嬉しく思っています。

今後は、棚田と施設とイベントと、すべて存続していけるような新しい体制づくりを進めると同時に、ふるさとのように愛着を持ってくれるファンが増えてくれることを願います。

(地域おこし協力隊・江島里美)

高山棚田 / 大阪府豊能町

高山棚田キャンプ

開催時期 2019年10月13日~ 14日、右近フェスタに合わせて初開催
※2020年春秋の企画はコロナ禍で中止
設  備 炊事場なし、トイレは徒歩5分程度
参加費等 ソ ロキャンプ3000円(棚田米、ソーセージ、薪含)~人数プランによる
※キャンプ用品等の有料貸出あり
問い合わせ https://www.ukonagripark.com/

戦国時代のキリシタン大名として有名な高山右近。そんなゆかりある地の高山棚田は近年、耕作放棄地化が進みつつあります。そんな使用されていない棚田を活用して、子ども連れの家族が自然と触れ合える農業を介した空間を作りたい。それが私たち「右近アグリパーク」の夢です。

昨年秋に、高山右近フェスタに合わせて耕作放棄地を整備し棚田キャンプを初実施、14組総勢40名のキャンパーが参加しました。炊事場がなくトイレも少し離れていますが、大自然に囲まれた絶景の高山棚田でブッシュクラフトを楽しむスタイルですので、その日初めてのキャンプの方々含めかなり楽しんでいただけました。そして満天の星空の下、参加者みんなで2000本のろうそくに着火する棚田キャンドルナイトは最高でした。

2020年も春と秋に実施予定でしたが、残念ながらコロナのせいで断念。来年はぜひ復活させたいと思っています。

右近アグリパークは、キャンプだけでなく体験イベントを主催したり地域のマーケットに参加し地元産品を販売するなど、積極的に活動しています。ぜひ一度、HPを訪れてみてください。

(談:右近アグリパーク事務局・中根康有さん)

◇ 認定NPO法人棚田ネットワーク会報誌「棚田に吹く風」118号(2020年秋号より転載

【会報誌】「棚田に吹く風」118号(2021年冬号)を発行しました。

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